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NPO法人くまもと温暖化対策センターでは地球環境・特に温暖化に関する知識を皆様に深めていただけるような出張講義や研修・イベントの開催・補助・出展等の推進活動を行ってます。
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お待たせしました!ついに最終回です!!
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「衆志成城」
遊佐 淑代
第六章 勝敗の行方
平成十二年五月、最後の石積みが始まった。
西山石材からは仕上げられた最後の石が届いた。
築城まで、あと四百二十メートルだ。参加者たちから、ひとつ、ふたつ、と積み上げる掛け声が聞こえる。川口の提案が実施されたので、効率よく、石が運ばれてくる。桜木の提案で送ったダイレクトメールを握りしめ、参加者たちは受付に並んでいる。二人の提案が功を奏したのだ。
お昼には、格安の百円うどんが配られた。予定の三百食が完売となり、追加のため、田山商店の主人が車を走らせたほどの盛況ぶりだった。
最終年の築城の長さは、毎年目標にしていた倍の長さもある。観光客たちも受付で知らされているため、一個でも多く積んでいこうと、午前中に帰る者はいなかった。
こうして、参加者の協力も得られ、石積みは急ピッチで進められて行った。
九月は最後の月となった。
十月には、万里長城のオープン式を迎えなくてはならない。
町民は、あと二十メートルに、自分の思いを込めて石を運び、積み上げた。
川口と桜木は、しのぎを削りながら石を積み上げた。
大歓声の中、最後の城壁の石が積み上がった。
夕方の四時二十分だった。
参加者たちは、肩を抱き合いながら互いの健闘を讃えた。
長宮師匠と寛太が、テント小屋から出てきた。
長宮の怪我は完治していた。
よしっ、長宮師匠は拳を握りしめた。
「川口、桜木、勝負をつける時がきたぞ、こっちへ来い」
長宮師匠は、講談師あがりの凜とした張りのある声で、二人を呼んだ。
桜木と川口は対峙した。
参加者は、何事が起こったかと二人の周りを取り巻いた。
「川口、桜木、良く十五年間、休まず頑張ってくれた」
長宮師匠は、二人に労いの言葉を贈った。
遠くから、山谷、工藤、春日が様子を覗っている。
本村も遠くから見ていた。
西山石材の社長や従業員も周りを取り巻くように様子を見ている。
山谷と本村は、川口と桜木の勝負を長宮師匠に託したのだ。
長宮は、任せておけと胸を叩いた。
「みんな聞いてくれ。お前たちが男の意地を賭けて、この石積みに参加し、一度も休まずに男の意地を通したなら、どちらかが手を突いて謝る。この勝負、俺は見届けた。お前たちは、メロスのように正義感に燃え駆け抜けた。俺は、お前たちを信じて、石に名前を刻んだ。必ず、約束を守ってくれるとな。俺は待ち望んだ。石工セリヌンティウスの心は一度だけ、友が来ないものと疑った。そう、俺も同じだ。どちらかが駆け抜けることができないのなら、俺はきっと、そいつをぶん殴っていただろう。だが、期待どおりに、石積みは完成した。お前たちは、意地を張る前に、ここにいる石積みに参加してくれた皆さんの前で、頭を下げろ」
長宮師匠は、桜木と川口に頭を下げるよう、間に入り、一礼をさせた。
長宮師匠は、桜木と川口をもう一度対峙させた。
緊張した雰囲気が伝わってきた。
「みんな聞いてくれ。俺が軍配をあげる。最後まで男として努力を惜しまなかった川口哲史、川口を尊敬しながら、男を立てた桜木誠治、ともに勝利とする。」
長宮師匠は、二人の手を取り握手をさせた。
割れんばかりの歓声と拍手が起こった。
山谷たちは胸をなでおろした。
「桜木、済まなかった」川口が頭を下げた。
「川口さん、僕は川口さんに教えられました。川口さんは、最後まで諦めず努力することを僕に教えてくれたのです」
二人の手に感謝と感動という力が込められた。
「来月は、万里長城のオープン式だ、もう一度、来てくれよ。ありがとう」
長宮師匠が手を振りながら、参加者たちに挨拶をした。
川口徹よ、お前の息子は、人に出会い感動することよりも人を感動させることを覚えてくれた。もう心配ない、安らかに眠ってくれ。
本村は、目を伏せながら手を合わせた。
平成十二年十月(西暦二千年)、さわやかな秋風の吹く快晴の下、オープン式が始まった。
志半ばで、この世を去った林課長の遺影が飾られていた。
桜木は、そっと手を合わせながらつぶやいた。
「林さん、この日が来ましたね。願いが叶いましたよ。私たちは課長のことを生涯忘れません」隣には、川口と工藤が手を合わせていた。
安藤町長の挨拶から始まり、来賓の祝辞を経て、山谷組と長宮石屋に感謝状が贈られた。
山谷組の感謝状は、社長代理で川口が受け取った。
中国領事館総領事の張平氏による挨拶があった。
張氏の挨拶の中で、「衆志成城」という言葉をいただいた。その意味は、「衆の心を合わせれば、城も築き上げられる。町民や参加者たちが心を合わせれば、大きなことも成し遂げられる」というものであった。
最後に、観光振興委員長の本村から、「この石積みは、町民と参加者の皆様の成果です。『衆志成城』矢文元年。今、矢文町の未来は、本日、この日から再び始まったのです」
と、願いを込めて感謝の意が表された。
割れんばかりの拍手の中、川口は泣いていた。
「あなた、泣くと社長に怒られるわよ」杏子が横でハンカチを渡した。
「社長は下痢で来ないよ」川口は目頭を押さえながら言った。
「俺がどうしたって?」山谷が川口の頭を小突いた。
川口は慌てて体裁を繕った。
「哲史、空を見ろ、雲一つないぞ。この空の色と風こそが、町民の心意気よ」
山谷は哲史の肩を抱きながら大声で笑った。
タクシーを呼びましたが、隣町へ行っているのかなかなか来ることもなく、その間に主人の万里長城の話はほぼ終わりました。
ようやく来たタクシーを実家に向かわせながら、主人はその物語の後日談を話してくれました。
川口は墓の前にいた。
「桜木、お前がこの世から旅立って、八年になるな。元気だったか」
川口は花と線香を手向けた。
桜木は、好きな釣りの帰りに、交通事故で亡くなったのだ。
オープン式から二週間後だった。
「今日は、小学校で矢文町の未来という題名の作文コンクールがあってな、佳作に入った作文をどうしてもお前に聞かせたくて来たんだ。いいだろう」
川口は、息子の翔太に読むように促した。
「矢文町の未来、五年一組、川口翔太。
僕のお父さんと役場の桜木さんは、一度も石積みを休まずに万里長城を作ることを約束しました。一度でも休めば、手を突いて謝らなければなりません。お父さんと桜木さんは、一生懸命、頑張りました。勝敗はありませんでした。お互いの努力と信頼で、多くの人たちに呼び掛け、みんなで城を作ったからです。二人は、健闘を称え握手をしました。友情の印です。僕はいつかこの町の住民となり、一人の町民として、頑張りたいと思います。お父さん、もし許してくれるのなら、僕は、桜木さんのような人に成りたい。役場に入り、町の人たちの暮らしを守ってあげられるような人に成りたいのです」
翔太は大きな声で読み上げた。
「桜木、お前のやって来たことは、子供たちがしっかりと守っていくぞ。安心しな」
川口は微笑んだ。
墓石の横には、長宮 寛太が彫り上げた座右が刻まれていた。
杏子は目頭を押さえながら、そっとつぶやいた。
「衆志成城、集いし仲間たち」と。