二人の母へありがとう2010 Message2010-4

二人の母へ、ありがとうメッセージ

「二人の母へ、ありがとうメッセージ」
                          熊本市 遊佐 淑代(ゆさ としよ)
 
私には母が二人います。
もの心ついた頃、私の家族の中に母という存在はありませんでした。
父と祖母との生活でした。
母のことを聞くと「死んだ」と言われ、私は、その言葉を信じて育ちました。
小学校の入学をひかえた一週間前に、今の母が、私の目の前にあらわれました。
父や親戚は「今まで、病気で入院していて、やっと良くなったから、淑代のところへ戻ってきてくれたのだ。」と私は言い聞かされました。
「お母さん」と、呼ぶ人ができたことは、私にとって、言葉で言い尽くせないほど、うれしかったことが思い出されます。
しかし、母の苦労はこの時から始まったのです。
自分の名前も書けないような私に、ひらがな、カタカナを教えてくれて、本を読み聞かせてくれました。
その頃の私は、親戚に虐待された憎しみが勝り、感情が欠如していました。母はなんとかして私に、喜怒哀楽の感じる心を伝えようと頑張ってくれました。
幼児期において、自然と母とのコミュニケーションで培われる心を育てようと必死だったと思います。
母の教えがわからずに困らせ、「ごめんなさい」と言えず、何度も母を泣かせたこともありました。
母のお蔭で、私は、人の痛みを感じ、優しくなれる心を育ててもらいました。
そんなある日「私を生んだ母が、私を置いて出て行き、どこかで生きている」と、おばから聞かされました。
その時、私は、稲妻に撃たれたような衝撃を受けたことを覚えています。
今まで本当の母と思っていた母が、生みの親でなかったこと、本当の母は、私を捨てて出て行ったことが、生みの母に対する怒りと、育ててくれた母に騙されたという想いが、涙であふれ、悲しみの心で、いっぱいになりました。
しかし、今の母と歩んできた道を振り返ると、母が心血をそそいで、私に関わってくれた愛情が、今までの悲しみを感謝にかえてくれました。
生みの母への怒りは、年とともに、消えていきました。
今、こうして二人の子供の母となり、初めて母親として、子供に対する心がわかったような気がします。
十五歳のとき、父が死に改めて、私を養子縁組してまで、育ててくれた母の苦労は、筆舌しがたいものがあったと思います。
ライトダウンの静けさにつつまれながら、キャンドルの炎をみつめながら、遠い北海道で、気丈に暮らしている母へ、心から感謝を込めて「ありがとうございました。」と伝えたい。
そして、私の前から去っていった、顔も知らない、もう一人の母に、もし、どこかで生きているのなら、一言、お礼を伝えたい、「私を生んでくれてありがとうございました」と。
このライトダウンに参加している、多くの方たちに、幸多からんことを、お祈り申し上げます。
(了)

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